2014年9月6日土曜日

ヴァイオリンを描く

楽器は、とても美しい形をしていてモチーフにする方は多いと思います。中でもヴァイオリンは昔から絵によく登場する楽器です。

今回アトリエラポルトに入られて3年のE.f.さんが、そのヴァイオリンをテーマに制作されましたので紹介します。










構図を考える上での重要なポイントは、ヴァイオリンをどの角度から見て描くかです。クロッキーをしながら試行錯誤の結果、右のような置き方になりました。ヴァイオリンの上面を見せるために、布を折り重ねてあご当ての側を持ち上げています。

キャンバスと同じサイズの画用紙に全体のバランスを考えながら、入念に鉛筆デッサンをしました。
あらかじめバーントアンバーで全体に薄く色をつけたキャンバスにデッサンを転写した後、カッセルアースで明暗を付けていきました。
明部をシルバーホワイトで描き起こす段階です。シルバーホワイトは、紙の上で油抜きして、溶き油と同じ溶液で練り直したものを使っています。こうすることで生乾きの状態での塗り重ねが容易になります。(画溶液は、以前このブログで紹介したラングレ著の「油彩画の技術」を参考にしています)
いよいよ彩色です。

使用した絵具は、イエローオーカー、レッドオーカー、バーミリオン、ウルトラマリン、ヴィリジャン、ネープルスイエロー、ローズマダー、バリュームイエロー、スティルドガラン、バーントアンバー、ランプブラックです。これに、状況に応じてカドミウム系の絵具を加えました。











常にモチーフと見比べながら色を捜します。
クラシックな技法では、パレット上での混色は出来るだけ避け、画面上での塗り重ねで色を出していきます。その為には、E.f.さんのように経験を積まないとなかなか思うような色になりません。




特に今回は、いつも省略していた布の模様を描き込む事を技術的な課題にしました。







ヴァイオリン P15号 
週3回(7.5時間)で、約4ヶ月かけて出来上がりました。対角線をベースにした構図で、斜線の多い構成ですが、右上がりの線と左上がりの線のバランスが絶妙(破綻ぎりぎり)に保たれています。色の組み合わせも、テーマのヴァイオリン(茶色)の周りを、反対色の濃緑色の布で囲むなど随所に工夫が感じられます。印象や直感だけに頼らず、論理的な造形思考を地道に積み重ねてきた結果が表れた秀作です。



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