2013年11月15日金曜日

模写から学ぶ(1) : ジョージ・ロムニー

今回から数回に分けて、Eさんが半年間かけて制作された模写の過程を紹介します。


Eさんの選ばれた作品は、18世紀のイギリスの画家ジョージ・ロムニー(George Romney 1734~1802)が描いた、エマ・ハミルトンの肖像(ニューヨーク フリックコレクション蔵)です。ヴァンダイクから始まるイギリス肖像画の系譜の中の代表的な作品のひとつです。

本来模写は、実物の作品を前にしておこなうのが理想ですが、Eさんご自身が、ニューヨークに滞在中にご覧になって、強く印象に残っている事と、偶然にもWeb上で非常に解像度の高い画像が入手できたので、教室で試みることにしました。教える側も、18世紀のイギリスの作品を模写した経験はなく、改めて資料を調べながら、Eさんと共に勉強させて貰いました。

*アトリエ・ラポルトの模写に対する基本的な考え方は、2012年8月8日と30日のブログ「模写をする」の1と3をご覧下さい。




まずは、ロムニーの技法を、残された作品から探ります。この時に、参考になるのが下記のような描きかけの絵です。


例えば、この作品を見ると、地塗りが中間色のグレーのキャンバスに、褐色(当時の資料から判断して、おそらくヴァンダイクブラウン)で、デッサンをしているのが分かります。
また、顔の描き始めは、かなり明るめの肌色で、モデリングしています。


この作品では、背景や服が、ダイレクトペインティングに近いやり方で、直接固有色が置かれています。このことから、かなり早描きだったと想像できます。おそらくキャンバスに絵具で描き始めてから、この状態まで1~2日位ではないでしょうか?



絵具については、ロムニーが使用していたものは分からなかったので、当時一般的に使われていた絵具に近いものから選びました。


溶剤は、ロムニーが短時間で描いているのに対して、模写は長期間の制作になるので、濃度と乾燥の調整を考えた処方を試みました。








模写制作の第1段階は、デッサンです。

原寸大近く引き伸ばした画像を見ながら、入念にデッサンしました。対象の固有の明度は追わず、正確な形を表すことに重点をおいて行いました。








                       
 出来上がったデッサンを、キャンバスに転写します。




シルバーホワイトに、ランプブラックと少量のレッドオーカーを混ぜて、温かみのあるグレーで地塗りをしておいたキャンバス(乾燥に1カ月)に転写されたデッサンを、ヴァンダイクブラウンでなぞります。(地塗りについては、2012年8月17日のブログを参照)















0 件のコメント:

コメントを投稿