2013年7月24日水曜日

石膏デッサンの描き方に疑問があって

建築パースの仕事をされているKさんは、以前からデッサンの描き方に疑問をもたれていたそうです。たまたまアトリエ ラポルトのホームページを見て訪ねてくれました。

持って来られたデッサンを拝見して、非常に描写力のあるのに驚きましたが、現象的な明暗を追いすぎて、形が曖昧になってしまっている事と、白い紙に対するモチーフの明度関係が考慮されていない為、ブロンズを描いたように黒いデッサンになってしまっているのが残念に思いました。




そこで、キューピットの石膏像に、スポットライトをあて、光と影がはっきりしたセッティングをして描いてもらいました。



光と影の境目をどこで区切るかは、難しいところですが、形を表すのに最適な位置を選択して、境界線を引きます。こうすることで、光の無限の変化を追って形がぼやけるのを防ぎます。また、影を置くことで、明部が白く明るく感じられるようになります。








Charles Bargue“Cours de dessin”より

このやり方は、19世紀後半に、フランスの美術学校で広く使われていたシャルル・バルグ(Charles Bargue)の手本帖にも見ることができます。



キューピット 画用紙に鉛筆 45.5×33.4


すでに他の教室でデッサンを習われていただけに、最初から完成度の高い作品となりました。背景に対する石膏像の明度関係の作り方を理解されたので、白い紙の上に、白い石膏像が表現できています。個々の形も良く描けています。 ただ、明部を描いていくと、現象的な陰影に惑わされて、黒ずむ傾向があります。美術解剖学に基づき、不必要な陰影を取り除き、対象の形を、デリケートなモデリングによって、的確に表せるようになる事が、次の課題だと思います。

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