2012年6月1日金曜日

本の紹介 5

「絵画の技法」 ジャン・リュデル著  黒江光彦訳  白水社(文庫クセジュ765 ) 1995年


左:フランス語版(第9版)   右:日本語版
原本は、「Jean Rudel, Techique de la penture」で、1950年の出版以来10回以上の版を重ねる、フランスで最もポピュラーな絵画技法入門書です。


余談ですが、クセジュ文庫(Collection QUE SAIS-JE?)は、フランスの岩波文庫のような存在で、他にも絵画関係では、遠近法・デッサン・美術史・美学など良い本が沢山あります。











絵の技術を広い視点から捉えて書かれたもので、直接的に絵の描き方を説明した技法書ではありません。

しかし、日本の美術教育の中では、あまり語られることのない内容が詰まった本です。例えば、右のような「画面の構成」の意義や「色彩の問題」についても、簡潔に分かりやすく説明されています。







フランス人のリュデルの技術上の考え方は、以前に紹介したラングレの「油彩画の技術」に繋がるものがあります。読み比べてみることをお奨めします。巻末の参考文献も詳しく、研究者の手助けになると思います。 ただ、これだけ内容のある本を書いた著者ジャン・リュデルについての紹介が少なく、訳者の略歴や翻訳経緯ばかりが目立つのは気になります。訳者は、あくまでも黒衣に徹するべきではないでしょうか?

0 件のコメント:

コメントを投稿